川瀬巴水という版画家を知っていますか?
浮世絵を超えた浮世絵『新版画』
先生をしていると、やはり優れた作品をどんどん生徒さんに紹介したくなるもので。これからも自作品だけでは無く掲載出来たらな、と考えています。
有名ではありますが、ご存じ無い方もいらっしゃるでしょう。川瀬巴水です。
作品を見てすぐにその古び様の無い感性、巧みに古今の文物を混成しつつ違和を感じさせ無い構図。その他、遠近・色彩・技法、言い表せない程の『美』が体内を通り抜けて行くのが分かりました。
川瀬巴水本人の力量もさることながら、彫り師、摺師の『卓越』という言葉では軽すぎる技量に驚愕すると共に、近代と江戸情緒が同居して我が国がこれ程美しい国だったのか、という目の醒める思いをするはずです。
特に若い方に知って頂きたい。あなたの住まう国はこんなにも素晴らしいのだと。
春過ぎて
夏が始まる前に春の絵を
タイトルからだと百人一首で知られる持統天皇の御製、『春過ぎて夏来にけらし白妙の 衣ほすてふ天の香具山』を紹介するのが流れでしょう。緑の間に陽を受けた衣が、白く輝く爽やかな初夏の歌です。
このところ気温も高く夏の足音が高くなって来ましたが、その前に春の絵を。
ヘッダーに使っている絵になります。
何年も前、確か旅先の群馬県で撮影した写真をもとに描いた作品です。描いたのは数年前。
葉桜の先にこちらを向いた鳥がいて、急いでシャッターを切りましたが運良くフレームに収まってくれました。
アップロード出来る画像の容量が月間で決まっていて先日の山茶花同様、若干画質を落として掲載せざるを得ないので、微妙なグラデーションや細部は分かりにくいかも知れません。
しばらく記事を書いてみて容量が大丈夫そうなら、順次画質の良いものを再アップロードします。
画題の通り霞んだ様を表現する為に、一度きちんと描いた鳥の上から何度も薄く色を引いています。必要のある箇所は、更に上から描き直して絵にしていきます。
葉桜と書きましたが、植物が花を落とし葉色を濃くしてその姿を変えて生きる様に、人も変化を求められるのでしょう。
追うべき鳥は霞の中へ溶ける様に去って、代わりに幾つかの幸運に恵まれこうして絵を公に出来る様になりました。
だのに気がつくと鳥を探しているのです。他にかえることの出来無い美しい日々を彩ってくれたその鳥を。
見て、知って頂くと共に
絵を見る、飾る
ブログを開設する動機として、まず自身の作品を見て、知って頂きたいという単純なものがありました。
情報発信のツールですから、ほとんどの皆さんが何かしら知ってほしいという欲求から開設されていると思います。
そしてもうひとつの理由が。
それは、このブログから絵や美術・芸術に興味関心を持って、可能なら自宅に本物の作品を飾る習慣が広まってくれたら、という思いです。
もちろん日本には床の間に季節ごとの軸物をかける習慣がありますが、そもそも現代の日本の住宅事情では和室自体も少なく、床の間にいたっては都市部のマンションや家屋に設えることも稀でしょう。
海外の蚤の市では、誰が描いたものとも分からない絵を買って気軽に家に飾ることがよくあります。
このブログで考える『作品を飾る』というのはそういう感覚で、作家の名前や値段ではなく個々人の感性で良いと思ったもの、そして出来たら本物を所有し『飾る』ことで生活に与える彩りが変わって来るのではないか、ということです。
これから自他の作品をこの場で少しずつ掲載、又は紹介して行こうと思いますが、肩の凝らない気楽なものとして絵や美術・芸術に興味を持って頂けたら幸です。
雑記の様な落書きも多いでしょうけれど。
さて、最初の記事になりますのでアイキャッチに使用している作品から。
『山茶花』です。植物に造詣が深く無いのですが、葉の形状から椿ではなく山茶花の様でした。
椿も山茶花もツバキ科だそうで自然交雑も多く見分けるのが難しいものも多いとか。
聞いたところによると自然界では交雑が進み過ぎて、専門家でも判別が困難なものもあるそうです。
しかしながら、種は変わったとしても後代を残すというその逞しさ、或いは恣意の無さに感じるものがありモチーフにした作品です。
そもそも『種』などというものも、人の勝手な分類法に過ぎないのかも知れません。そんなことを考えながら、筆を進めた作品です。