古い絵が出てきたので

後に活きて来ました

片付けをしていたところ、かなり古い絵が出てきました。

住んでいる市内の郊外で撮影した写真をもとに描いたものです。

A4イラストボード(ホワイトキャンソン紙)にアクリル絵の具

今見るとやはり未熟で、掲載はややお恥ずかしいところではありますが背景の処理の方法や、モチーフに対する写実性に対しての考え方が変化する契機になった作品です。

細部のアップを見ると分かるのですが、トンボの大部分は塗るのではなく、細い線で描き込んでいます。

細い線で、昆虫特有の毛なども描いています

絵の中で技法的にやりたいことがまとまっていない絵になっているのですが、部分毎には後に活きて来る作業や試みが見られたのでした。

やはり、きちんと描こうとする意志があれば無駄にはならないものです。何事も同じですね。

今、絶望の最中にいる方へ

中坊公平先生『金ではなく 鉄として』

今日は本を紹介したいと思います。読書はそれ自体が役に立つのではありません。その人の情緒を育てます。畢竟、何らかの表現を行う者にとって影響を与えずにはおきません。

私は辛くなるとこの本を読みます。

弁護士として有名な中坊公平先生の本です。

 

市井に生きる人々の刻苦、慟哭、逞しさ、人情、倫理観、希望。それらが中坊先生の成長とともに露わになるとき『生きる』ということの真理の一端が見える気がするのです。

一度だけ講演を拝聴する機会があり、必死になってメモを取ったのですが、惜しいことにどこへしまい込んだか分からなくなってしまいました。

 

ご自身の弱さを、人々の悲しさを知っている先生だからこそ、数々の巨大な組織を向こうにまわして、法廷で一歩も引かない戦いを続けることが出来たのだと分かります。実際、有名な『森永ヒ素ミルク事件』のくだりはギリギリの戦いと、それ以上の悲哀に涙無くしては読めません。傷付けた者よりも、自責によって傷付ける行為の救われることの無い絶望は…。

 

弁護士バッジを外された先生は、晩年を自ら『忍辱の日々』と評されていました。その理由については、興味を持たれた方にお任せします。

 

人の弱さを知り尽くす先生は本書の中で

『私はひどい劣等生でもあり、結局、弱いけど秀才というのでも、勉強はできなかったけど元気というのでもない、両方ともあかん少年やった。しかし、そんな自分でも、最後はかぶりつき、血を飲みとおしてでも闘う本能を持っていることに気がついた。(略)

自分のような人間は、ほかの人が嫌がってせんようなことでもやらな、生きてけん。けど、そう覚悟を決めたら道はあるのやーー(略)

「萎縮せんかて、人の生きる道はいろいろでっせ、大丈夫、僕だって見てみ、何とかなっとる」という信号を送ってみたい。よろしかったらお付き合い願いたい。』(本書帯より)

また、

『人間が堕ちていくということを、私はあの時いささか知った気がする。これをお読みの方で、今、そうした中にある方がいはったら、も少し先まで、私と一緒に行きまへんか』と優しく語りかけるのです。

 

まるで自分の為に書かれたのか?と錯覚する程、出来の悪い時分の私の心に沁みました。同じ様に弱さを抱えている方、今絶望している方、一度読んでみませんか?

弱さ故に堕ちて行く先を何度か覗き込んだことのある私は、中坊先生とこの本を旅することで、落涙しつつも立ち上がることが出来ました。

そして今尚、私の作品に影響を与え続けているのです。

 

一義的な正義など存在しない。それが分かっていても不安で不安で堪らない時、鬼籍に入られた中坊先生に聞かずにはいられないのです。『先生、先生の目を通した正義の向こうの私は、正しく生きていますか?』と。

試みる

表現方法の模索

ひとくちに絵描きと言っても、色々な画材を使いこなすオールラウンダー的な作家もいれば、ひとつの画材・技法を専門に打ち込む方もいます。

 

今回、掲載する作品は色鉛筆でどこまで表現出来るのかを模索して生まれた絵になります。

 

これまではアクリル絵の具で描くことが多く、次いで油絵具でしたが継続して作品を制作・発表する為には、扱える材料を増やす必要性を感じていました。

生徒さんたちの描く絵として、色鉛筆の指導は長年行っていましたが自らの作品として挑むことは無かったので、表現の幅を増やす機会として取り組んだものになります。

 

A3イラストボードに色鉛筆

 

残念ながら鳥の種類は分からないのですが、何気なく撮影した一枚から絵にしてみました。

単純に羽毛の描き分けや、強弱にも気を遣ったのですが、何より目指したのは『色の数をどこまで使いこなせるか』ということでした。

結果、色幅はかなり持てた絵になったかなと感じています。ご覧頂いた方々の評判も良く、何度か購入したいというお話を頂いているのですが、もう少し色鉛筆の研究をするのに手元に置く必要がある為お譲り出来ないでいました。

 

今ご依頼頂いている絵が数枚あるのですが、そのうちの何枚かを色鉛筆で描く構想なので、それらが満足出来るレベルであればそろそろお出ししようかな、と考えているところです。

 

現在も表現方法の模索は続けていて、水彩画の技術を向上させるべく悪戦苦闘している最中です。

川瀬巴水という版画家を知っていますか?

浮世絵を超えた浮世絵『新版画』

先生をしていると、やはり優れた作品をどんどん生徒さんに紹介したくなるもので。これからも自作品だけでは無く掲載出来たらな、と考えています。

有名ではありますが、ご存じ無い方もいらっしゃるでしょう。川瀬巴水です。

 

明治16年から昭和32年までを生きた浮世絵師・版画家です。

作品を見てすぐにその古び様の無い感性、巧みに古今の文物を混成しつつ違和を感じさせ無い構図。その他、遠近・色彩・技法、言い表せない程の『美』が体内を通り抜けて行くのが分かりました。

作品は『パブリックドメインQ』さまのフリー素材より

川瀬巴水本人の力量もさることながら、彫り師、摺師の『卓越』という言葉では軽すぎる技量に驚愕すると共に、近代と江戸情緒が同居して我が国がこれ程美しい国だったのか、という目の醒める思いをするはずです。

作品は『パブリックドメインQ』さまのフリー素材より

特に若い方に知って頂きたい。あなたの住まう国はこんなにも素晴らしいのだと。

iPhoneや特にiPadをお持ちの方は、無料のBookに作品集が2冊あるので是非ご覧ください。

春過ぎて

夏が始まる前に春の絵を

タイトルからだと百人一首で知られる持統天皇の御製、『春過ぎて夏来にけらし白妙の 衣ほすてふ天の香具山』を紹介するのが流れでしょう。緑の間に陽を受けた衣が、白く輝く爽やかな初夏の歌です。

このところ気温も高く夏の足音が高くなって来ましたが、その前に春の絵を。

ヘッダーに使っている絵になります。

『春霞』 F3号キャンバスにアクリル絵の具

何年も前、確か旅先の群馬県で撮影した写真をもとに描いた作品です。描いたのは数年前。

葉桜の先にこちらを向いた鳥がいて、急いでシャッターを切りましたが運良くフレームに収まってくれました。

 

アップロード出来る画像の容量が月間で決まっていて先日の山茶花同様、若干画質を落として掲載せざるを得ないので、微妙なグラデーションや細部は分かりにくいかも知れません。

しばらく記事を書いてみて容量が大丈夫そうなら、順次画質の良いものを再アップロードします。

画題の通り霞んだ様を表現する為に、一度きちんと描いた鳥の上から何度も薄く色を引いています。必要のある箇所は、更に上から描き直して絵にしていきます。

 

葉桜と書きましたが、植物が花を落とし葉色を濃くしてその姿を変えて生きる様に、人も変化を求められるのでしょう。

追うべき鳥は霞の中へ溶ける様に去って、代わりに幾つかの幸運に恵まれこうして絵を公に出来る様になりました。

だのに気がつくと鳥を探しているのです。他にかえることの出来無い美しい日々を彩ってくれたその鳥を。

見て、知って頂くと共に

絵を見る、飾る

ブログを開設する動機として、まず自身の作品を見て、知って頂きたいという単純なものがありました。

情報発信のツールですから、ほとんどの皆さんが何かしら知ってほしいという欲求から開設されていると思います。

 

そしてもうひとつの理由が。

それは、このブログから絵や美術・芸術に興味関心を持って、可能なら自宅に本物の作品を飾る習慣が広まってくれたら、という思いです。

もちろん日本には床の間に季節ごとの軸物をかける習慣がありますが、そもそも現代の日本の住宅事情では和室自体も少なく、床の間にいたっては都市部のマンションや家屋に設えることも稀でしょう。

 

海外の蚤の市では、誰が描いたものとも分からない絵を買って気軽に家に飾ることがよくあります。

このブログで考える『作品を飾る』というのはそういう感覚で、作家の名前や値段ではなく個々人の感性で良いと思ったもの、そして出来たら本物を所有し『飾る』ことで生活に与える彩りが変わって来るのではないか、ということです。

 

これから自他の作品をこの場で少しずつ掲載、又は紹介して行こうと思いますが、肩の凝らない気楽なものとして絵や美術・芸術に興味を持って頂けたら幸です。

雑記の様な落書きも多いでしょうけれど。

 

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山茶花』 F4号キャンバスに油彩

さて、最初の記事になりますのでアイキャッチに使用している作品から。

山茶花』です。植物に造詣が深く無いのですが、葉の形状から椿ではなく山茶花の様でした。

 

椿も山茶花もツバキ科だそうで自然交雑も多く見分けるのが難しいものも多いとか。

聞いたところによると自然界では交雑が進み過ぎて、専門家でも判別が困難なものもあるそうです。

しかしながら、種は変わったとしても後代を残すというその逞しさ、或いは恣意の無さに感じるものがありモチーフにした作品です。

そもそも『種』などというものも、人の勝手な分類法に過ぎないのかも知れません。そんなことを考えながら、筆を進めた作品です。

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